鋳込み作りの「筒茶碗」徹底解析
鋳込み作りの筒茶碗 見どころ解説
2017/12/14~12/21まで工房展を開催中です。
今回は展示の中から鋳込みで作った筒茶碗をピックアップし、詳細を解説いたします!
サイズ
幅10.5cm / 高さ9cm
重さ:261g
素材:磁器土
釉薬:陶土をベースに調合した透明柚、やや黄色味
焼成:酸化焼成
彩色:下絵具、黒
鋳込み(イコミ)
まず、鋳込み(イコミ)とは何かという事を簡単にご説明いたします。
形を作る方法として、手びねり、ロクロ成型、石膏型を使った型作り等があります。
鋳込みとはその中でも石膏を使った型作りに属します。
石膏を使った型作りにも、粘土を板状にして型に伏せたりする作り方がありますが、鋳込みはそれとは違い、泥漿(でいしょう)にした磁土などを型に流し、数分間石膏に泥漿を吸わせて、残りの泥漿を排泥すると吸われた泥漿だけが型にへばりついたように残ります。形が崩れない位に乾燥させ石膏型から外します。
画像はプレート皿とカップの鋳込み作業。何分間石膏に泥漿を吸わせるかと言うのは大事なポイント。お皿は長めにして少し厚みをつけます。カップは薄作りを狙うため、排泥までの時間を短くします。
型作りは簡単に沢山、同じ物が作れるような印象ですが、型そのものを作るのにも時間がかかり、鋳込みの時間で厚みも変わり、排泥の作業方法によっては歪みが出たりします。同じ型を使っても、微妙に表情が変わります。また、工場と違い、個人での鋳込み作業は1日で限られた数のしか作業ができずに、効率が良いとは一概に言えません。
割り型の石膏型、バリを楽しむ
割り型とは抜け勾配を考慮し作品が型から外せない時などに、型をあらかじめ割って作品が石膏型から抜けるようにしておきます。
その際に型と型のつなぎ目に泥漿が入り込みバリが出来ます。たい焼きの周りにつくパリっとした所です!
そのバリをきれいにペーパーなどをかけて消してしまえばバリのつなぎ目は分からなくなりますが、その、バリ跡の線も手作りならではで面白いのです。
この、筒茶碗の一番の見どころはこのバリ跡です。縦に入った線は型を割った箇所にできるバリ跡なのです。
先に、抜け勾配のお話をしましたが、この茶碗は、実は、型を割らなくても大丈夫な形なのです。しかし、このバリ跡の線が付けたく、あえて、無駄に型を割ってあります。
また、泥漿鋳込みの特徴として内側には割った場所の跡は付きません。
彩色、黒の効果
いったん全て黒い彩色用の絵具をベタ塗して拭き取ります。そうする事により、へこみやバリ線が際立ちます。
面白い場所を目立たせるための彩色でもあります。
サイズ感
幅10.5cm / 高さ9cm
まず筒茶碗の持ちかた。お茶を頂く時、筒茶碗は右手で写真の様に持ち(写真は左手ですが)、左手を底に添える、それは筒茶碗ならではです。片手で手に収まるサイズ。
亭主の立場になると、茶碗の底を茶巾で清めるのが筒茶碗では難点です。お客の立場では片手で、亭主の立場では碗に手が入るサイズ、その絶妙を意識してサイズを決めました。
寒い季節を待って、お目見えする筒茶碗
筒茶碗を作るきっかけは、「わたし、いちばん寒い季節に筒茶碗を出すのが楽しみ」と言う、お客様の声がきっかけです。そこから興味を持ち筒茶碗の制作に取り掛かりました。
また、お茶室で筒茶碗を持つとなんとなく背筋が伸びて、姿勢も綺麗になるような気がして、顎をスッと上げて飲み切るその瞬間も好きで、作るのも、使うのも好きです。筒茶碗を使う日は寒ければ寒いほど良い、そんな気もします。夏にも使いたいって思う位です。季節限定なのがよいのかもしれませんが、寒くて凍えるような季節の楽しみです。